【Coincheck問題】不正流出の補償は仮想通貨の下落要因になるか?

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2018年1月26日に発覚したコインチェックの仮想通貨「NEM」不正流出事件は、28日未明にコインチェックが保有者約26万人への全額補償を発表したことで、少し落ち着きを見せているような気がします。

しかし、今回の事件が今後の仮想通貨市場に様々な影響を及ぼすのは間違いないと思います。

今回は、コインチェック事件が今後の仮想通貨市場にどのような影響を与えるかについて考えてみます。

金融庁が「コインチェック」処分へ

金融庁は2018年1月28日の午後、コインチェックから今回の流出に至るいきさつやセキュリティー対策などについて詳しく聞き取り、週内にも行政処分を行うことを検討する方針を固めたそうです。

仮想通貨の取引所は資金決済法に基づいて2017年10月から登録制になっていましたが、コインチェックは関東財務局に登録申請中で、まだ審査を通っていませんでした。しかし、改正法施行前から運営していたので「みなし業者」として特例措置で運営を行っていました。そのため、金融庁内には「登録前の取引所だったのは不幸中の幸い」との声もあったといわれています。しかし「みなし業者」とはいえ、運営を認めていたという責任も感じていると考えられます。

「みなし事業者」として登録済みの業者と同じ規制を受けることになっていることからも、今回の不正流出が

  • システムの安全対策が十分でなかった。
  • 不正アクセスにより過去最大の仮想通貨の流出を許した。

ことを重大視して、金融庁がコインチェックに「一部業務停止命令」を出す可能性もありそうです。

他の仮想通貨取引所への影響

金融庁はコインチェックのNEM不正流出を受け、27日に仮想通貨取引所を運営する国内全ての企業の代表取締役宛てに注意文書を送付し、「今後も仮想通貨交換業者を狙って大規模なサイバー攻撃が行われる可能性が十分考えられる」と注意喚起をしました。

注意文書では

  • 情報システムや業務用端末の再点検
  • 不審な取引や通信への警戒
  • システム障害やセキュリティーを侵害する事案を検知した場合の当局への一報

などを指示したそうですが、金融庁が仮想通貨取引でこうした注意喚起をするのは異例とのことです。

その金融庁ですが、現時点では仮想通貨の技術に精通している金融庁職員は「庁内でも一握り」しかいないそうです。組織として「ブロックチェーンと呼ぶ関連技術」や「複雑な取引履歴の解析」といった専門知識を持っていないため、管理体制を徹底し、相次ぐ仮想通貨を狙ったサイバー攻撃を水際で防ぎたいと考えるものの、どうしても「受け身」の対応にならざるを得ないのが実情のようです。

その金融庁に認可され登録されている国内の仮想通貨取引所は2017年1月17日現在16社あります。

関東財務局〈計13業者〉

近畿財務局〈計3業者〉

この16社以外にもコインチェックをはじめとした「継続審査中」「審査待ち」の仮想通貨交換業者が多数あるそうです。今回の不正流出は、今後の審査のさらなる厳格化やそれらの会社の審査にも影響するかもしれません。

また、もしコインチェックに業務停止命令が出た場合、すぐに業務再開とはいかない可能性も考えられます。

〈参考〉仮想通貨交換業者登録一覧(金融庁)

コインチェックは補償のための現金をどのように準備するのか?

コインチェックは、今回の不正流出の補償の返金原資は自己資金を使うと発表しています。しかし、資本金9,200万円のコインチェックは、約460億円にも上る現金をどのように準備するのでしょうか?

NHKが28日午前に、コインチェックの広報担当者に行った電話インタビューによると、

仮想通貨の流出の被害を受けたおよそ26万人への補償について自己資金で賄うとする一方、補償の時期については、「できるだけ早く行いたいが見通しは立っていない」と述べるにとどまりました。(1月28日 12時21分NHK NEWS WEBより)

とのことです。

確かに、コインチェックは利用者を急速に伸ばし、その取引手数料だけで毎月莫大な収益があったともいわれているようですが、それでも約460億円もの現金を保有しているとは考えられません。

その上で、今後もし「業務停止命令」が出て業務再開に手間取るようだと、その収入減も絶たれてしまいます。

さらに、今回の件のより多くの利用者がコインチェックから離れてしまったり、「仮想通貨はもうこりごり」と仮想通貨取引をやめてしまうことで、コインチェックの利用者が大きく減る可能性もあると思います。もし、そうなれば取引手数料は更に少なくなってしまう可能性もあります。

そして、このような状況では、銀行から融資を取り付けるのも難しいでしょう。(460億円の融資などまず不可能なはずです。)

今回、コインチェックが比較的迅速に補償について発表したのは、そのような恐慌的な出金騒ぎを回避する狙いもあったと思います。

では、コインチェックは約460億円の補償についてどのような手段を考えているのでしょう?

コインチェックには、今回の補償を賄うだけの現金の資産こそ充分ではないかもしれませんが、1,000億円を超える仮想通貨の資産があるともいわれています。コインチェックはこの仮想通貨の資産を今回の補償の原資に見込んでいるのではないでしょうか?

しかし、これには大きな問題があります。460億円にも上る仮想通貨を売却しようとすれば、仮想通貨価格の大きな下落を招く可能性があると思います。現状の仮想通貨は2017年末から2018年初めにかけて急騰したこともありかなり高値圏にあると思いますが、もし、460億円もの売りがあればそれを引き金に一気に値崩れを起こすかもしれません。

また、仮想通貨の価格下落は補償の原資の減少にもつながるため、急激な価格下落が起こってしまうと補償事態が困難に陥ってしまう可能性もありうるような気がします。

コインチェックが補償の時期や方法を明確にできないのはそういったジレンマがあるのかもしれません。

世界的な仮想通貨への規制強化の動き

仮想通貨については世界的にも規制強化の動きが強まっています。

中国では2017年に仮想通貨取引所を禁止しましたが、2018年1月には、取引所と類似のサービスを提供するオンラインプラットフォームと携帯アプリケーションを標的に、さらに取り締まりを強化することを中国当局の関係者が語ったといわれています。

2017年に国内の仮想通貨取引所Youbit(ユービット)が、ユーザーの保有する資産の約5分の1を盗まれるという大規模なハッキングを受け18億円もの被害により「経営破綻」する事件のあった韓国でも、2018年1月18日に、韓国金融委員会の崔鍾球(チェ・ジョンク)委員長が、国内にあるすべての仮想通貨取引所の閉鎖を政府が検討していると明らかにしたそうです。

また、フランスとドイツは2018年3月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で仮想通貨の規制案を共同提案する考えを表明しています。これは仮想通貨がテロ資金の温床となったり、価格の乱高下で金融システムの不安材料になったりする恐れがあるのを懸念しての動きのようです。

一方、日本は「利用者保護」と「取引所への規制」を真っ先に整えた「仮想通貨の先進国」としてこれまで市場の拡大をけん引してきました。そんな中で起きた今回のコインチェックのNEM不正流出事件は、これまでの仮想通貨市場に暗い影を落とすことは間違いないと思います。

さらに、3月のG20で仮想通貨が議題に上がれば、今回の流出事件が話題の上るのはまちがいありません。そうなれば世界的な規制強化の動きがある中で、日本政府が仮想通貨の規制をさらに強化することになるかもしれません。

そのように仮想通貨市場にブレーキがかかれば、現在の仮想通貨市場の過熱の沈静化=価格の下落につながるような気がします。

まとめ

今回は、コインチェック事件が今後の仮想通貨市場にあたえる影響について考えてみました。

今回の事件を受けて、金融庁が仮想通貨の規制を強化する可能性は高いと思います。

また、コインチェックが補償の原資として仮想通貨の資産を取り崩すことで、今後、仮想通貨価格の下落があるかもしれません。

さらに、世界的な仮想通貨の規制強化の流れを受けて、仮想通貨を取り巻く市場にブレーキがかかり、これまでのように”買えば上がる”という状態から、価格の下落局面を迎える可能性もあると思います。

素人ながらこんな風に予測してみましたが、どのようになるのでしょう?

コインチェック事件が今後の仮想通貨市場にどのような影響を与えるかについての考察は以上です。

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