【匿名性暗号通貨】コインチェックが仮想通貨交換事業者として認可されなかった本当の理由【マネーロンダリングリスク】

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2017年4月。金融庁は世界に先駆けて仮想通貨取引所の登録制度を導入し、10月1日より取引所登録制度が施行されることになりました。これにより仮想通貨の交換業を行う業者は、2017年10月1日以降、金融庁による審査・登録がされないと仮想通貨取引所の運営をすることがなったのです。

そしてコインチェックは10月1日の時点で金融庁より認可を受けることができず「みなし業者」として営業を続けていました。

約580億円のNEM不正流出が発覚し、その後、ずさんなセキュリティ対策が明らかになった今となっては、その措置は当然だったように思えますが、実際はもっと別の部分が問題視されていたといわれています。

今回は、コインチェックが仮想通貨交換事業者として認可されなかった本当の理由について考えてみます。

コインチェックはなぜ金融庁に認可されなかったのか

仮想通貨取引所の登録制度の導入を受け、コインチェックが金融庁に登録を申請したのは2017年9月のことです。しかし施行直前の9月29日に発表された登録業者11社の中にコインチェックの名前はありませんでした。

その後も継続審査が続いていましたが、通常なら約2ヵ月で終了する審査が終わらないまま不正流出が発覚するまで「みなし業者」として運営を続けていました。

認可の遅れについてコインチェックの和田社長は「取り扱うアルトコインの種類が多いため、審査に時間がかかっている」と話していました。

確かにコインチェックは取り扱う仮想通貨の多さも魅力の1つです。認可申請時には実に13種類の仮想通貨を取り扱っていました。

コインチェックの取り扱う仮想通貨(認可申請時)

BTC(ビットコイン)、ETH(イーサリアム)、ETC(イーサリアムクラシック)、LSK(リスク)、FCT(ファクトム)、XMR(モネロ)、REP(オーガー)、XRP(リップル)、ZEC(ジーキャッシュ)、XEM(ネム)、LTC(ライトコイン)、DASH(ダッシュ)、BCH(ビットコインキャッシュ)

しかし、取り扱う仮想通貨の「種類の多さ」が問題であれば、同じように多数の仮想通貨を取り扱うZaif(テックビューロ株式会社)も問題になりそうですが、そのZaifは9月29日に認可登録されているのです。

Zaifの取り扱う仮想通貨(2018年1月30日現在)

BTC(ビットコイン)、MONA(モナコイン)、BCH(ビットコインキャッシュ)、XCP(カウンターパーティー)、ZAIF(ザイフ)、BCY(ビットクリスタル)、SJCX(ストレージコインエックス)、PEPECASH(ぺぺキャッシュ)、FSCC(フィス
ココイン)、CICC(カイカコイン)、NCXC(ネクスコイン)、Zen(ゼン)、XEM(ゼム(ネム))、ETH(イーサリアム)、CMS(コムサ)

どうやら問題は取り扱う仮想通貨の「種類の多さ」ではなく、取り扱う「仮想通貨の種類」。中でも「匿名性暗号通貨」と呼ばれる3種類の仮想通貨がネックになったといわれています。

匿名性暗号通貨とは

「匿名性暗号通貨」とは手・受け手を匿名化した形で取引を行うことを可能とする暗号通貨(仮想通貨)のことです。

例えばビットコインでは個人名を公開せずに取引を行うことは可能ですが、ブロックチェーンにアドレスが残るためアドレスから取引をたどることができるので、完全に匿名な状態ではありません。

これに対し匿名性暗号通貨は送り先のアドレスをワンタイムアドレスにしたり取引時のデータシャッフルなどで、送り手と受け手が誰なのか追跡できなくすることができるという特徴があります。

この「送り手と受け手が誰なのか追跡できなくなる」ということがマネーロンダリングや税金逃れに利用されるとして懸念されています。

コインチェックでは、ダッシュ(Dash)モネロ(Monero・XMR)ジーキャッシュ(Zcash・ZEC)の3種類の匿名性暗号通貨を取り扱っています。

このうちモネロについては、ダークネット市場が取引通貨として採用するという話もあります。また2018年1月には、米国のサイバーセキュリティー会社・エイリアンボルトが「モネロの採掘コードをインストールし、採掘した通貨を北朝鮮の大学のサーバーに送る仕組みのマルウェアを発見」するなど、北朝鮮との関与の可能性も取りざたされています。

ダークネット市場(ダークネット・マーケット)

TorやI2Pなどのダークネットを介して運営されるダークウェブ上の商業ウェブサイト。それらは主に合法商品の販売に加えて、ドラッグ、サイバー兵器、武器、偽造通貨、盗難クレジットカード情報 、偽造文書、無許可の医薬品 、ステロイド などの違法商品の販売または仲介取引を行うブラックマーケットとして機能する 。(Wikipediaより)

「匿名性暗号通貨」について金融庁は「業者が扱いたいという通貨を、扱うなということはしない」と、排除しない方針を示す一方「匿名通貨についても、取引所なら監視できるとされている。取引を監視するシステムを構築する必要があるが、相当の時間がかかるはずだ」と、仮想通貨取引所に匿名性暗号貨をしっかりと監視できるシステムの構築を求めているようです。

コインチェックは「匿名性暗号通貨」を取り扱うにはシステムが不十分として認可されていなかったと考えられます。

匿名性暗号通貨によるマネーロンダリング・リスク

マネーロンダリング対策(AML)はいまや世界中で注目が高まる大きな問題です。仮想通貨についても、仮想通貨がテロ資金の温床となったり、価格の乱高下で金融システムの不安材料になることが懸念されおり、最近ではフランスとドイツは2018年3月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で仮想通貨の規制案を共同提案する考えを表明しています。

こうした中、実際にコインチェックから不正流出したNEMが匿名性暗号通貨ダッシュにより資金洗浄されている可能性が出てきました。

コインチェック盗難NEM、匿名コイン「DASH」で資金洗浄か ダークウェブで交換持ちかけも – ITmedia NEWS

仮想通貨取引所コインチェックから約580億円分の仮想通貨「NEM(ネム)」が流出した問題で、不正送金先の口座の持ち主が「ダーク(闇)ウェブ」と呼ばれる匿名性の高いインターネット空間で、他の仮想通貨との交換を持ちかけていた形跡があることが7日、分かった。実際に取引が成立しているかは不明だが資金洗浄を図る動きの可能性がある。(2018年2月7日 21時49分 ロイターより)

ダークウェブ」とか「ダークネット市場」とか普段聞きなれない言葉がたくさん出てきますが、

  • アクセスするために特定のソフトウェア、設定、認証が必要なネット空間が「ダークウェブ
  • 「麻薬、銃器、個人情報などが売買されている」といわれる、ダークウェブ上の商業ウェブサイトが「ダークネット市場

ということのようです。

ダークウェブ上では他にも「XEMを15%割引で販売する」というサイトも登場し、通常のレートより割安の取引を持ちかけているそうです。実際に取引が行われたかどうかは分かりませんが、仮想通貨、中でも特に匿名性暗号通貨はマネーロンダリングリスクがとても高いことが伺えます。

まとめ

世界的にマネーロンダリング対策(AML)に注目が集まる中、「匿名性暗号通貨」は今後、強い規制を掛けられる可能性が高いと考えられます。

金融庁も世界的な仮想通貨の規制強化の動きを受けて「匿名性暗号通貨」を排除する方向へ舵を切るかもしれません。

このような中で、もしコインチェックが仮想通貨交換事業者として認可されるためには「匿名性暗号通貨」の取り扱いをやめるしかないような気がします。しかし、そんなことをすれば現在、利用者が保有している3種類の「匿名性暗号通貨」ダッシュ(Dash)、 モネロ(Monero・XMR)、 ジーキャッシュ(Zcash・ZEC)が大きく値を下げる事態を引き起こしかねず、そう簡単にはいかないと思います。

私なら、裏社会との関係が取りざたされるような通貨の下落の引き金を引くなんて恐ろしいことは・・・。

セキュリティ問題や資産管理の甘さなどを指摘されるコインチェックですが、取り扱う仮想通貨の判断でも大きなミスを犯していたのかもしれません。

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